大嫌いな幼なじみと再会した場合。




幸いにもその声は葵に届いて、

その距離はまた広がった。




「何が嘘なの。」



「……キス……したこと……

ほんとはしてない。




違うの。

出来なかったの。


急に怖くなった。彼の顔が近づいてきたとき。

好きだったはずなのに、その一瞬、あんたとのキスが思い出されて、

彼のこと突き飛ばした。」




「俺のせいって言いたいわけ?」



「だって……そうじゃん!

私は……」





私はあなたに失恋したんだ。

葵は遊びの一貫だったんだろうけど、私にはそう思えなかった。


憧れてたから。

好きな人との、葵との、両想いのファーストキスを。



きっとキスが失恋を思い出す鍵になってしまっている。







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