夜ー闇に隠された瞳の奥ー
治矢は話し終わると私の手を強く握った。
私も握り返す。
「…………ありがとう。聞いてくれて。すっきりした。話してよかった。
今は、あんなことがあったからこそ今の俺がいるんだって思えるよ」
「あぁ」
「…………みずなは、優しいね」
「優しい?私が?」
「うん。同情されるより、こうやって手を握っててくれる方が嬉しい」
「…………そうか」
「うん。これで少しは乗り越えられたかな」
「…………治矢はもう、乗り越えれてるじゃないか」
「え?」
「人に話すことができて、それを前向きに捉えられているのなら、お前はもう大丈夫だ。私が保証する」
私がそう言うと、治矢は綺麗な涙を流した。
「…………えーん」
子供みたい。
私はそんな治矢の頭を撫でてやる。