私の仕事と結婚
いつもの癖で名刺を探してしまった。

出すことは出来ないのに。

「イメージと、出来れば家具や照明など決まっているものが有ればお聞かせ下さい。」

私は施主と向かい合う典弘のお兄さんの横の椅子に座った。

典弘は少し離れた部屋の隅の方で、こちらの様子を伺っている。

それからは話がスムーズに進んだ。

カタログは所狭しと出されている。

かなりインテリアに詳しい上に、こだわりも半端ではなかった施主さんに、私もこれまでの経験をフル稼働させた。

「やっと話が分かる人に出会えたわ。」

施主の奥様が笑う。

「でも本当にインテリアの事、よくご存じですね。もしかして海外でその関係のお仕事をされていたとか?」

私はそう尋ねた。

施主夫婦のインテリアの感覚が海外の影響を受けているのは間違いないと思ったから。
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