私の仕事と結婚
「だまってて悪かった。俺も兄貴も現場でずっと働きたくて、親父の会社に入社しなかった。入社したら、絶対跡を継げって言われるからね。」

「そんな大事な事黙ってるなんて。私の両親にも言わなかったじゃない。」

私はやっぱり典弘という人を分かり切っていないようだ。

親子そろってだまされたように感じた。

「歩夢には俺という人間を見て欲しかったから。兄貴にも早く両親の事は言う様に言われてた。」

「まるで私を信じていないみたいね。」

段々気持ちが冷めていく私が居た。

「今までの女はみんな俺の親のステイタスを見て近寄ってきた。俺自身なんて後回しなんだ。歩夢には本当の俺で判断して欲しかった。それが4年間も動けなかった理由さ。」

彼の言い分に、私は無性に腹が立った。

やっぱり返事が早過ぎたのかもしれない。

「私も今まで典弘が付き合って来た女の人達と同じだと思っていたって事ね。車を止めてよ。」

もう典弘と同じ車に乗っていたくなかった。

「歩夢、話を聞いて。」
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