私の仕事と結婚
「典弘と何があったかは知りません。でもあなたもプロなら約束した仕事はやり遂げるべきです。」

確かにお兄さんの言う通りだ。

私は仕方なしにうなずく。

「確かにそうですね。分かりました。日、月曜日の会社の休みの日に設定して頂けますか。」

「分かりました。それと桜井さん、一度だけ典弘と連絡を取ってやってもらえませんか。」

お兄さんが深々と頭を下げる。

「頭を上げて下さい。もう典弘さんもせいせいしていると思いますから。」

私は慌てて言った。

「うちの事務所で働きだしてから、あいつは取りつかれたように仕事をしています。 あまりの姿に、兄として心配なんです。すっかり笑顔を無くして、ひどい有様です。あの様子では、施主との打ち合わせにも出せない。あいつと話をしてやって下さい。どんな答えになるとしても、あいつにちゃんとけじめをつけさせてやってほしいんです。私から典弘に一度だけ連絡するように言いますから、拒否しないでやってほしい。」

あまりのお兄さんの迫力に負けて、私は渋々うなづいた。

「では、また打ち合わせの連絡させて下さい。」

お兄さんは私の携帯番号を聞くと、そのまま帰って行った。











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