私の仕事と結婚
もう囁くくらいの声。

典弘ってこんな人だったっけ?

「お願い。もう一度だけで良いから、話を聞いて。最後に俺を知るための時間を作ってほしい。」

そのままお互いに黙り込んでしまう。

「俺は歩夢を愛してる。その気持ちだけじゃダメなの?」

痛いほどの典弘の気持ちが伝わってくる。

「もうこんな頑固な女と結婚したって、大変なだけよ。」

ダメだ、涙がこぼれそう。

「とにかく明日、仕事が終わったら歩夢の会社に向かう。待ち合わせしたって、逃げられるだけだからね。ちゃんと顔を合わせて話をしよう。」

それだけ典弘は言うと、電話を切った。

頬を涙が伝っていた。

私にとって典弘ってどんな存在なんだろう。

まるで気絶するかのように思考をストップさせた私は、そのままソファで眠り込んでしまった。










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