私の仕事と結婚
典弘は私の方を向いた。

「私はそんなに立派な人間じゃないわ。母も言った通り、仕事にのめり込んだ可愛げのない女よ。」

私は苦笑いをした。典弘は話を続けた。

「結局は俺自身を見て欲しかった。それだけだったんだ。」

典弘は私の方に手を伸ばしてきた。

「俺達はもうやり直せないの?」

その手を取り、私は自分の頬にあてた。

「私は、ご両親の事で私の態度が変わると思っていた典弘が許せなかったの。結婚まで決めた相手にそんなに信用されていないなんて…。私は仕事で施主さんに私を信用してもらって、その上で良い提案をして笑顔になってもらうのがやりがいなのに、それが一番好きな人にちゃんと伝わってないなんて。正直、裏切られたと思った。こんな大事な事を私にも、親にも黙っているなんて。」

「歩夢、ごめん。やっぱり育ってきた環境の違いで、こんなに感じ方が違うんだね。」

とても寂しそうな顔をする典弘。

「あのね、横山さんにもう典弘は私にとって必要な人間になっているんじゃないかって聞かれたわ。」
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