私の仕事と結婚
「契約は必ずしてくれるだろうが…、こればかりは大きな買い物だからな。」

いつも穏やかな施主さんが契約でハンコを押す段階になって、なかなか押せないのは良くある事だ。

またいろんな気になる事を確認し始めて、何時間もかかる事もある。

でも家を一軒建てるというのは、かなりな決心だ。

だから、そうなってしまうのもしょうがないものだと私達は思っている。

横山さんはこういう時ほどじっくり腰を落ち着けて、施主さんの後悔の無いように導く。

始めはそのやり方にじれったく感じたけれど、契約の解除がほとんどない。

私はそういう横山さんの仕事ぶりがとても好きだ。

「ユニットバスの色の件は大丈夫か?」

「どうしても絞れないみたいなので、もう一度色の見本を持って行きます。発注の件があるので、早く決めて頂けるとありがたいんですけど。」

私達は家の図面を見ながら、契約に向けての打ち合わせを始めた。










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