私の仕事と結婚
野崎さんはなかなか話題が豊富で、頭の良さを感じさせる人だった。

彼も建築科を出ているようで、建築士の資格を持っているようだった。

「出来れば自分で建築事務所を開けたら良いなと思ってます。そのためにこういう住宅の設備も勉強したくて、この会社に入社したんです。だから桜井さんには頭が上がらないほど、いろんな事を教えてもらってます。あの営業の横山さんもかなりなやり手でしょう?施主の希望を取り入れるのに、住宅の構造を理解してどこまで出来るかを追求する。そういう質問を頂くと、毎回自分で調べて答えを出さないと桜井さんは納得してくれない。初めの半年は無我夢中でパニックってました。でもある時気が付いたんです。自分がいつの間にか会社で一番自社製品の特長を理解している事に。」

そこで野崎さんはビールをぐっと飲みほした。

「あなたとならお互いを高め合っていけるんじゃないかって、そう思ってます。」

ニッコリと笑う野崎さん。

「あなたの仕事のやりがいは施主の笑顔ではないですか?」

「えっ?」

「それだけいろいろ勉強されているのは、信頼を得て、施主の希望を出来るだけ取り入れて、喜ぶ顔を見るためじゃないんですか?」

深く考えた事はなかったけど、確かにそうだ。

見事に言い当てられた私はじっと野崎さんを見つめる。

< 36 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop