夏影
「おう、千影!久しぶり」


慣れた様子でソファに座っている勇人が、軽く右手を上げて千影を見た。


千影の心臓が、ドキンと音をたてる。


「お兄ちゃん、おかえりなさい。元気そうね」


そう言いながら、千影もソファにゆっくり腰かけた。


「や~、久しぶりに母校の制服見たわ!千影、女子高生だなぁ!」


まじまじと勇人に見られ、千影は


「そんなに見ないでよ。卒業してからまだ5ヶ月くらいなもんじゃん」


と笑った。


「まーな。でも新鮮だよ。大学は私服ばっかだしな」


「大学、楽しい?」


そう聞いた千影の頭に、進学を薦めたいと言った竹本が浮かんだ。


「ん~。まぁな。自由だし、楽しいよ」


料理を作っている母が、横から口を挟んだ。


「あなた、彼女はできたの?そんなに楽しんでるなら、ガールフレンドくらいいるんじゃないの?」
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