夏影
勇人はハハッと笑った。


「まーね、彼女なら入学して割とすぐにできたよ」


「あら、そうなの?どんな子?」


「別に~。見た目は可愛いよー。あとはフツーかな」


「何よー、フツーって」


母と勇人の会話を、千影はただ聞いていた。


「あ、着替えてこよっかな」


制服姿で千影はソファから立ち上がった。


勇人の横をすり抜けるとき。


右手をギュッと握られ、千影は顔をしかめた。

「この絆創膏、どうしたの?ケガ?」


勇人に聞かれ、千影はドキンとした。


「あ……別に、転んだの」


「またあのバカ女たちにやられたのか?」


そう言いながら千影を見つめる勇人から目をそらすと、千影は何も答えずに2階へ向かった。
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