夏影
勇人と千影の出会いは、1年前の事だった。


「篠崎千影さん、いる?」


そう言って千影のクラスを訪ねてきたのが、勇人だった。


その際、クラス内は大いにざわついた。沢井勇人センパイと言えば、ルックスも良く友達も多く、明るくユーモアもあり成績優秀スポーツ万能……と言うことなしの逸材だったのだ。

その勇人が篠崎千影に会いに来た。
クラスの女子は好奇心を抱いて千影を見た。また北野ミカたち一部の女子グループは、それとは違った凄まじい視線を千影に向けていた。


戸惑っているのは千影も同じだった。


〈なぜ、この人が私を?何の用なんだろう。何か落とし物でもしたかな。それを届けてくれたとか?〉


アレコレ考えながら、その男性の前へ立つ。


「私が、篠崎ですが……」


勇人がじっと見つめる。千影はドギマギした。
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