夏影
階下へ降りると、母と勇人が食卓につくところだった。


「着替えてきたのか、千影。制服のままが新鮮で良かったのに」


勇人が笑いながら言う。


「やだよ、落ち着かないしくつろげないもん」


千影も笑顔で返した。


「勇人も大学へ行っちゃって、寂しいかと思ってたけど、大学も楽しそうだしお母さん安心したわ。千影も高校生活、順調そうだしね」


母の言葉に、千影は一瞬ドキッとしたが、すぐに笑顔を作った。


「うん、まぁ順調だよ。そろそろ進路について考えたりしなきゃだけど」


「そっか、高2の夏だもんなぁ。お前、何か考えてるの?」


勇人に聞かれ、千影は言葉に詰まった。


「いや、まだ……どうしたらいいか分からなくて」


そこへ


「ただいま」


と父が帰ってきた。


「おー勇人!久しぶりだな!」


「父さんも。つってもGWからまだ3ヶ月だけどね」


話題は変わり、千影は小さく息をついたのだった。
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