夏影

保健室には誰もいなかった。
「あれぇ?保健の元井先生、いないなぁ。まぁいいや、柴崎、そこ座って」


竹本に指示され、千影は丸椅子にちょこんと腰かけた。


竹本が薬棚をゴソゴソと探る。


「あ、あった。これだ。柴崎、右手を出して」


竹本は千影と向かい合う形で机の椅子に座り、千影の右手を取った。


不器用な手付きで、消毒液を塗り、絆創膏を貼る。

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