9歳差は、アリですか?
相手は浅岡より背が高く、顔は見えないが、おそらく整っていて、年齢も立原より上のようだ。背も顔も収入も心の広さも、すべて上だ。
何一つその男に勝っているところが無く、浅岡は激しい衝撃の反射で、彼女を置いたまま駅を飛び出した。そして全力で闇雲に走る。

あれが俺を振ってまで手に入れた男?あんな奴のために涼子は俺を振ったの?俺の方がよっぽどいい男なのに、あんな奴絶対浮気して涼子傷つけるし、俺にしといた方が全然いいのに、なんで、俺じゃないの。俺の方が涼子のこと好きなのに。もう好きになって7年目に入るのに、それくらいずっと好きだったのに、

結局俺はずっと片想いなのか。

家までの道で河川敷があるが、そこを叫びながら走る。電車通で4駅学校まで距離があるのに、ショックで何もわからず気づけば家の前だった。

「ハル、おかえり」

母親の声も聞こえず、2階の部屋に上がる。そしてそのままベットに倒れこんだ。
すると堰を切ったように涙が溢れてきた。振られた日よりも、今の方がずっと傷ついてショックが大きかった。

仕事名古屋から戻ってたんだ。知らせてくれるはずもないのに、もう彼氏でもなんでもないのに、嫉妬が身体中を渦巻く。俺以外の奴に笑わないで、ドライって言われててよ。なんで、俺じゃないの、年下で頼りないから?
辛くて、浅岡は携帯を取り出して、愛知に住む従兄弟に電話をかけた。立原が名古屋に行ってから特に、同じ愛知繋がりで最近はよく電話をしていた。従兄弟といえど10以上は上のお兄さんな為、立原と付き合う前から恋愛相談していた人だ。この人には泣きながらでも相談できる。しゃっくりが止まらないままコール音を耳に当てた。

『ハルカ、どうした?』

数コールで出て従兄弟に余計涙が止まらない。

「コウちゃん、俺っ」

優しい声に、すべて吐き出す。立原への未練も、嫉妬もすべてぶつけた。
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