9歳差は、アリですか?
どうでもいい事を話しながら駅に着くと、揃って下車する。時計を確認するとまだ時間がありそうだ。

「今行くには早いかな。駅でゆっくりしてく?」
「そうですね。あ、あたし本屋寄ってもいいですか」
「本屋?いいけど」

いつも浅岡と待ち合わせしたテレビ局の最寄り駅は割と大きなところで、色々な店が複合されていて便利だ。浅岡の学校の最寄り駅でもあったので、カフェ・レストランだけでなく本屋や服屋などもあるこの駅はよく利用していた。デートしたのもここだ。懐かしくて軽く目を伏せた。

「本屋か…。何買うの」
「…ちょっと」

今日は初めからここで買い物するつもりだった。しかし、思いついた風を装って本屋に入る。
立原は迷わず料理コーナーに向かった。そして色々と手に取る。

「料理本かあ、上手なの立原さんって?」
「普通です。下手ではないですけど」

買う相手は、自分ではなく浅岡にだ。立原と付き合うようになって浅岡は少しだが料理をするようになり、結構はまっていたようだった。だから今日は浅岡に卒業祝いで料理本を買おうと思ったのだ。
本当を言えば、立原が教えてあげたかったが、そんな事はできないので本で甘んじることにするのである。そして、笹山がいる時に買うのはその本を笹山にどこかで届けてもらおうと思ったからだ。
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