9歳差は、アリですか?
仕事ではいつもヒールが高めのパンプスばかりなので、今日は歩きやすさも重視してそこまでヒールのない靴だ。酔った勢いで女友達と衝動買いした、立原にしては可愛らしいおしゃれな靴で、今回はあの時酔って買ってよかったと思った。今までタンスの肥やし状態だった為活用できて靴も本望だろう。

ヒールがあまりなく歩きやすいので、足も疲れることなく駅に着く。待ち合わせの10分前で恐らく浅岡は来ていないようで立原は嬉しくて顔を緩めた。
とりあえず切符を買おうと思い切符売り場に向かうが、はたと止まる。

ーーー行き先知らない。

ダメじゃん!と自分に内心突っ込みその場で立ち尽くす。知っていなければ先に駅に来た意味がない。

「見てー、あの人かっこよくない?いくつぐらいだろ」
「んー、大学院生くらいじゃない?落ち着いてて大人な感じ」
「でも爽やかね」
「彼女いるのかな」
「いるでしょ。あんなイケメンが週末駅で待ってるなんてデート以外何でもないでしょ」
「そうかあ、彼女綺麗な人なのかな」
「ねえ!美人じゃなかったらうちらでちょーっと鎌かけに行かない?」
「いいね」
「彼女くるの待っておこうよ」

なんて、とんでもおませな会話をする女子大生らしき数人のグループを横目で見ながら、立原は構内を見回した。まさか女子大生の会話の人物が浅岡とも知らず呑気に浅岡を探す。まだ待ち合わせの時間でない為、電話するのも憚られるが立原は携帯を握り待っていた。
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