9歳差は、アリですか?
女子大生が騒ぐ方向とは逆方向に立原は足を進めた。立原の中では爽やかでイケメンなんて、浅岡しかいない。早く会いたくて辺りを見回す。

「どこらへんで待ってたらいいかな…」

分かりやすそうな改札の手前の空いたスペースで柱にもたれた。
と、

「涼子!どこ行くのさ」

突然、後ろから手首を掴まれ立原はびくりとなった。相手はもちろん浅岡だ。

「は、悠くん…」
「もう、待ってたら違う方向行っちゃうし焦ったー。ーーーその、振られたかと、思った…、」
「なんで!振るわけないでしょ。今まで被害者だった悠くんはともかく、前科のあるあたしが振るわけ、」
「前科があるからでしょ。…もう、勝手なこと言わせないから。は、初デートだし、」

ようやく事態が落ち着くと、お互い気恥ずかしくて声が低く抑えめになる。そうなのだ、今日は初デートの日である。

「お、おはよう。そのっ、待った…?」
「いや、だ、大丈夫。俺さっき来たばっかだったしっ」

嘘だ。浅岡は待ち合わせ20分前にはもう駅に着いていたのに、バレるのが恥ずかしくてとっさに嘘を吐いた。変なところ鈍くて天然な立原はそんな常套句にあっさり騙されて表情を和らげる。
外だというだけで人見知り発動し自然と無表情の無愛想になるが、浅岡のおかげで大丈夫そうだ。
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