9歳差は、アリですか?
周りに人がいると分かっているが、それも相乗効果で心拍数を加速させる。今顔を見れない。酷く赤くなっているはずだ。今ばかりは、車内が混んでいて良かったと思う。人影で顔の赤さが誤魔化すことができているといい。

「涼子」
「な、何?」
「あ、いやっ。涼子の耳が赤くなってたからどうしたのかなあって」

浅岡は照れ隠しも滲んだからかう口調で再び立原を除き込む。大学生になってから、もう浅岡のペースだ。いつの間に大人(?)になっていたのやら分からないが、意外としっくり来て、それに応えるつもりで、立原は指先が触れる右手で浅岡の手を少し強めに握った。

いわゆる『恋人繋ぎ』になる予定だったが、今までの彼とそんなことしたことがなく慣れないせいか、綺麗に指は交互に絡まらなかった。一瞬お互い固まったが、微笑しながらゆっくりと顔を見合わせると、指先もゆっくり動かし交互に絡まるよう移動させる。

「涼子」
「何?」

デジャヴのようだが今回は1分前より、耳元で囁かれる吐息が甘かった。立原ばかりがドキドキさせられているみたいで、面白くない。だから、

「お返しっ」

周りに気付かれるか気付かれないかのギリギリの角度で、立原の唇は浅岡の頬をかすめた。
すぐに顔をわざと背けてたが、髪の隙間から見える浅岡の耳は赤くなっている。してやったりで、立原は浅岡の腕に軽くもたれ掛かった。
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