9歳差は、アリですか?
好きな人と付き合うというのは本当に幸せなんだと、立原は初めて実感する。浅岡の事が好きで好きでたまらない。その腕に自分の腕を絡めたい衝動に駆られる程だ。

「涼子」
「何?」
「涼子、本当可愛いすぎ」

口元に拳を当てて微笑む浅岡を見上げて、立原は頬を染めた。立原に言わせれば、その仕草の方がよっぽど可愛い。というか、独り占めしたい。なのに、

「涼子、好きだよ。ほかの男なんか見ちゃダメだから」

耳元で少しハスキーな声で甘く囁かれて無事じゃないわけがない。心臓の脈打ちが一気に加速する。

「涼子は?」

見上げると、期待に膨らんだ浅岡の顔がある。その質問に関してはちゃんと答えておきたかったが、電車の中では無理だ。浅岡のように(立原限定だが、)そうほいほい好きなんて言えない。

「あ、あとで言う」
「今、ダメ?」
「ダメ」
「なんで?」
「こんなに人がいたら…、悠くん以外の人にも聞こえちゃうでしょ」

面白がるように小首を傾げる浅岡を軽く恨みがましく見上げる。それでも、立原は浅岡の事が、

「好きよ」

そっと背伸びして浅岡の耳に唇を寄せた。

「これでいい?」

立原は照れ隠しで少しつっけんどんに唇を尖らし、肘で浅岡を突ついた。
浅岡は自分から振ったくせに顔を赤くして首をすくめている。その行動が立原よりでかいのに、可愛いく感じた。
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