9歳差は、アリですか?
さりげなくだったが、それに気づいた立原はとくんっと動脈が動くのを理解した。首がとくんとくん、と苦しい。しかし、少し遠出で知り合いに会うこともないだろう。それで立原は思い切って、浅岡の肩に頭をもたれ掛け甘える事にする。

「ペットショップだけあって、色がどれも綺麗だね」
「うん、ペットショップって感じしないね。綺麗」

水族館独特のブルー系の間接照明で暗く不思議な空間に包まれているようで、お互い大胆になっていく。

「涼子」

耳元で囁かれ、全身に鳥肌が立つ。心地よい鳥肌だ。

「何、悠くん?」

誰もいなくて、微かな水音が響く暗がりで立原が浅岡の方を見た。

静かにどちらからともなく互いの唇が重なる。

時が止まってしまった錯角に陥った。むしろこのまま時間が止まればいいのに。名残惜しそうに少し湿った唇が離れる。触れるだけのキスだが、嬉しくて立原は浅岡の胸にそのまま顔を埋めた。 二人の周りを透明なクラゲやカラフルな熱帯魚が泳ぐ。
いつもだったら絶対にしないのに、浅岡に抱きしめられた。

「ねえ涼子」

耳元で名前を呼ばれ、心臓がうるさい。しかし抱き締めている浅岡の速い心拍数も肌で感じれて、ホッとする。ドキドキしているのは立原だけでなく浅岡もだったのだ。
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