9歳差は、アリですか?
すると立原は申し訳なさそうに眉を垂らした。それから少し唇を尖らす。

「だって悠くんに食べさせて貰うなんて、心臓がもたないもの…」

じゃあさっきの俺の心臓は⁉︎とも思うが、立原が無性に可愛いのでよしとする。

「あ、そうだ悠くん。話しあるんでしょう?」

誤魔化すためだろうが、振られて浅岡は背筋を若干伸ばした。そろそろ言わなくてはいけないだろうとは思っていたが、なかなか緊張するものだ。手にじわりと汗が滲む。ポケットに手を一度突っ込んで自分を落ち付けようと、一瞬俯いて息を整えてから意を決して顔を上げた。

「あのッ、涼子これ!」

ポケットから手を出して、机に勢いあまって叩きつける形となり金属音が響いた。
手を退けるとその下には鍵が一本ある。

「よかったらこれ貰って欲しい…」

恥ずかしくて、何度も練習したはずなのに声は尻すぼみになる。立原の顔が見れないやはり早まり過ぎたか、引かれたらどうしようといろんなマイナスの感情が脳内を渦巻いた。

「これ…、鍵?」
「あ、うん。その俺、大学上がってから一人暮らし始めたんだ。実家の近くだけど一応。で、そこの鍵」

やばい引かれた完全に!
真っ青になりそうなのを必死で押さえ込むが顔が引きつっているのが自分でも痛い程分かる。

「これ…、悠くんちの、鍵…?」
「ごめっ、やっぱ嫌だよねえこんなの、」
「いいのあたしなんか貰って。そんな事なら早く言ってくれたら良かったのに、引越しの手伝いとかしたかったのに」
「え?」

それなのに予想していた返答と全く違う反応で、一瞬思考が停止する。
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