9歳差は、アリですか?
暗証番号は教えてあって、勝手に入っていいと言っている為、浅岡はインターフォンなんて押さなくても良かったはずである。しかし、押したということは正式な話があるということで、自然と立原の背筋が伸びた。

ついに、別れないといけないのか。初めてとも言える執着に少なからず自分が驚いている。

震える手でインターフォンを取り、受話器を耳に当てた。

「ーーーーは、悠くん…?」
「あ!涼子ごめん突然押しかけて。えっと、メール見た?」
「ごめん、見てない」
「そっか…。涼子仕事忙しそうだったけど、ちょっと話があって、来ちゃった。今大丈夫?」
「あ…」

どうしよう。嘘をつきたい。メール見てないと既に嘘はついているのだが、今日仕事だと嘘をつけば、また逃げることになるのだろうか。
しかし、逃げても何の解決策にもならないのは分かっている。分かってはいるのだが、本気で好きだからこそ、本命に振られるのには多少の勇気だけでは決意が固まりきれていない。

「あ、……迷惑だった?無理だったらまた今度でいいよ。その、涼子が都合いい時連絡してくれたら俺合わせるから。えっと、近いうち話したいから」

返答に困っていると、浅岡から口を開く。都合がいい時連絡してって、あたしにそんな根性あるとも思えない。


もう、どうにでもなればいい。どうでもいい。


いつかは別れなければいけないのだから、その時期が早まるだけなの話だ。受話器が拾わない声の大きさで、自嘲気味に笑う。

「待って、悠くん。あたしまだ着替えてないだけだから、入っていいよ?あまり部屋綺麗じゃないけど、どうぞ」

自然と出たのは、承諾の意思で、少し声が震えてしまったが、そこはインターフォンの電子音で誤魔化せているだろう。
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