9歳差は、アリですか?
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卒業が近づいたある日、いつものように中庭で浅岡が近づいて来た。しかしその日はいつもとは違って、ニコニコしておらず神妙な顔つきだ。
「涼子さんさん、もうすぐ卒業ですねー。寂しいです、会えなくなるなんて」
「そう?なんか複雑だけど」
しばし沈黙が流れてから、浅岡がゆっくり口を開いた。
「涼子さん、…俺本当に好きなんです。ネタとか色々言われましたけど、本当に。ダメですか?付き合ってもらうのは」
いいよ、と言いたいくらいドキっとしたがこれが最後だ。諦めて貰わないと困る。なんだか目覚めが悪い。
「悠くん、やめてそいうの本当に。あたし迷惑だし好きじゃないから」
わざと冷たく突き放した。迷惑なんて思ってないし、むしろそんなに好きと言ってくれて恥ずかしかったが、嬉しかった。しかし、さすがに中学生にずっと想われるのは浅岡が可哀想で無機質な声で傷つける。
ごめんね、悠くん。好きだけど、あたしもどういう好きか分からない。
浅岡を置いて立原はそれ以上何も言わず校舎に戻った。