9歳差は、アリですか?
薄暗い台所でしんと流れる沈黙の中、立原は低く声を出した。

「…あたしだって普通じゃない。悠くん見たとき凄い大きくなってて、全然子供じゃなくて、ーーー心臓止まるかと思ったくらい。しかもあたしの事覚えてくれてて。だから、イライラするの。ドキドキしてるのあたしだけみたいで、嫌なの。あれだけ前好きって言ってきたくせ、今だったら返事違うかも、とか思っても何も言ってこないし、なんともない顔してて。なのにこんな所で不意に言ってくるし、もうなんだか分からなくなってきたの。しかも、返事聞かないとか勝手な事言いだすし、どうしたらいいか分からなかったの。ーーーって、ごめんいきなりおばさん何言ってんだろうねー。本当にごめん、忘れて今の」

言ってしまってから、変な空気になっているような気がして、目を泳がす。

しかし、「でも」と浅岡はゆっくりと付け足した。

「俺、前は涼子さんしか本当に見えてなかった。涼子さんが好きだ、涼子さんと付き合いたいって。でも違いますよね。俺がどれだけ涼子さんに告白しても、俺は涼子さんの事何も知れないし、涼子さんは俺の事何も知らないんです。だから、知ってもらいたいの。知ってもらった上で、振られるなら諦めつくけど、今のままじゃ、無理。…それでさっきの家庭教師お願いしたんです。不純な動機ですけど、ーーーそこまでしても、涼子さんが欲しいんです。他の男の事好きになんかならないで欲しい、俺に振り向いて欲しいーーーだから、まだ返事しないで欲しいというのは、ダメですか?」
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