9歳差は、アリですか?
「そういえば、涼子から誘ってくれるなんて珍しいね」

電車に揺られながら、浅岡は何気なく隣の立原に話し掛けた。しかし、思った以上に立原が言葉に詰まった様子で、首を傾げる。

「その…、今日はちょっと話があって、」
「話し?」
「まあ、お店でねっ?」

なんだか流された感じがしないでもないが、まいっか、と浅岡はシートにもたれた。
そして、横目で立原を盗み見る。すうっと通った横顔は男の人がほっとく筈がない綺麗さだ。いつ見ても本当に自分の恋人になったのだろうかと思わず疑ってしまう。
浅岡は年下ということにだいぶコンプレックスを抱いているので、中々自信が持てない。しかも立原の方は積極的になったとは言え、普通のカップルより愛情表現が格段に乏しいのには変わりなく、キスだって浅岡仕掛けて、週一ペース。手を繋ぐのもデート三回につき一回。好きと浅岡はよくいうが、立原は片平さん事件(?)の時初めて言ってくれた以外あれから何もない。デートのお誘いも、たまに(月に二回あればいい方)あるが、まずその事件までがゼロで舞い上がっていたが、よく考えるとほぼほぼ浅岡からしか言っていない。

待って、俺たち末期?恋人としてだいぶ末期症状だろ。

やはり本当に立原と付き合えているのか不明だ。あの時の「好き」は浅岡が思う「好き」と種類が違ったにだろうか。
電車の中で会話がなかった為、どんどんマイナスに加速して行く。
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