9歳差は、アリですか?
「悠くん…?」
「涼子、さん」

店を出ると店の壁にもたれる浅岡がいた。なぜいるのか分からず戸惑う。

「涼子さん帰り危ないですから。ーーー大丈夫です、下心なしなので」

なんで、酷い事言ったのに待ってくれてるの。もっと好きなっちゃう。浅岡に好きな人ができても諦められなくなる。

「なんで」
「危ないですから」
「そうじゃなくて、…あたし酷い事、」
「別に大丈夫ですよ?涼子さん今更何言ってるんですか?俺何回降られてると思ってるんですか?ちょっとやそっとじゃ、ビクつかないですよ」

柔らかく笑う浅岡の顔を見て、自然と目から水が溢れた。

「涼子さん⁉︎」

もう涼子とは読んでもらえない。自分から言ったのに、馬鹿みたいだ。

「悠くん、ごめんね、ごめんね。本当にごめんね、あたしっ。ごめん」

すっと差し出されたハンカチを無意識に抵抗なく受け取り目に当てる。何人か通行人もいたが声もなく、涙が溢れるままにした。
浅岡は黙って待ってくれている。

「悠くん、」

好き。
しかしそれは言えない。

「ありがとう」

ようやく、ハンカチを目から外し浅岡を見上げた。浅岡は変わらず柔らかく笑っている。
ハンカチをぎゅっと握りしめてどうにか笑い返した。通じた筈である。
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