9歳差は、アリですか?
あまり乗り気ではなかったが、手を引かれていて、カフェまで連行される。入口に着く前に側面のガラス越しに店内を見た。2か月前まではしょっちゅう通っていたのだ。自然と窓際の三番目の席に目が行く。しかしそこにはもちろん人がすでに座っており、あそこは俺と涼子の席だったのにと変な独占欲が出てきた。

そこは俺たちの席だったのに、ーーー

俯きかけたが必死で顔を上げてもう一度三番目の席を見た。そして固まった。突然立ち止まった浅岡を怪訝に思い、彼女が浅岡の袖を引っ張るが、全くどうでもいいくらい感じない。

なんで、そこに座っているの一人で。

固まる浅岡の視線の先には、一人で物憂げに紅茶を飲む、立原がいた。セミロングの毛先だけ軽くかかっているパーマの弱いうねりが首筋から垂れて顔の半分が、角度の問題で見えなかったが、立原だと直ぐに分かった。
いつもは一つにまとめて、歩くたびゆるいパーマが揺れていたが、今日は垂らしているのを初めて見る。

仕事、大変だったんでしょ?甘いもの一緒に食べよう。

そう言って店内に入りそうになるが、慌てて抑制する。もう浅岡は立原の彼氏ではないのだ。入口までの数メートルが進めない。彼女が怪訝そうに見ている。

「やっぱ、やめとくよ俺」

振られた女に未練たらたらなんて最低だし、第一同じ空間になんていられない。

「ええー、やだ。一人で入っても楽しくないもん。一緒入るの!」
「ちょっとごめんね」
「あ、すみません。どうぞ」

店に入るの他のお客さんに迷惑になった為、入り口から少し離れて彼女を宥める。でも彼女の言う通りだ。一人で入っても楽しくない。立原は楽しいのだろうか。彼女を無視して再び立原の方を見た。
すると、先程入口の前を退いた時に入っていった人が立原に近づいていた。何かを話しているが、ちょうど立原の表情は見えない。彼氏?迎えに来てくれたのかな、嬉しいの?涼子。
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