幻恋【続】
それと同時に、彼女の顔には様々な表情が出ていた。
驚き、絶句、怒り、悲しみ、そして………嫉妬。
川崎君は慌ててパッと私から離れると、静かに真顔でAちゃんに近付いた。
川崎君も悲しそうな、傷付いたような表情をしていて、それが私にとっては、Aちゃんをこんなにも思っているんだ、って言う悲しみを思わせた。
Aちゃんに謝るのかな、って思った。
…けれど、川崎君が言ったその言葉は、思いもしなかった驚きの言葉だった。
「ハハッ、何だよ春華、今日はやけに来るの早ぇーじゃないか。
俺にそんなに会いたかったのか、ん?」
川崎君は、その言葉をニヤニヤしながら言っていた。
今度は私の方が、驚きを隠せなかった。
…パンッ……!!
そんな音が聞こえ、ハッとすると、痛そうにしている川崎君が見えた。
「最っ低!!」
Aちゃんはそう言い残すと、涙を溜めた潤んだ目をしながら教室に背を向けて、素早く駆けて行った。
これってつまり、川崎君は私を選んだと言う事なの?
素直にとても嬉しかった。
なのに、当の川崎君は黙ったまま。
「…川崎君?」