幻恋【続】
2[未来side]
私は、見つめた。
撤去されていく旧校舎を。
これをあの先輩が見たら、きっと悲しむんだろうな、って。
春華先輩は、私の母校でもある旧校舎をとても気に入っていた。
何でも、旧校舎のこの古さが歴史を感じて、好きなんだと言う。
…一ヶ月前。
春華先輩が、高校の制服姿で、部活に久しぶりに顔を出した。
笹村さんの号令があって、楽器を片していると、早山(ハヤマ)が春華先輩が来てくれたって報告してくれたんだ。
だから、その声に一番に反応した私と恵美と紗耶香は、真っ先に春華先輩の元に向かった。
旧校舎の事を言おうと思ったけど、春華先輩は紗耶香が髪を切った話で夢中になっていたから、慌てて会話を遮って、旧校舎の事を春華先輩に打ち明けた。
春華先輩は驚き目を見開いていたけど、すぐに悲し気な表情をした。
これは言っても良かったのかな、って直後に後悔した。
「…おいっ、聞いてんのか?」
先生にいきなり指図され、ハッとして、今は授業中だと言うのを改めて理解した。
…春華先輩。
…旧校舎が、別れを告げるかのように今、笑った気がしました―――。