幻恋【続】
ありがとう
[旧校舎side]
さようなら、生徒たち。
さようなら、先生方。
そして
サヨウナラ、愛する人―――。
今月。
僕が壊される。
僕は、老朽化などが原因となり、今月を目処に解体される事になっている。
今まで、色々な出来事があった。
僕が生まれた時から今まで、沢山の数の生徒たちを僕は見てきた。
その中でも、一番僕に優しくしてくれたのは、僕が初めて“好き”と言う感情を抱いた人だったんだ。
二上春華さん。
平成22年度の卒業生だ。
最後、卒業式で春華さんは、音楽室で僕に優しく話し掛けてくれて、最後にお別れを言って音楽室を、校舎を旅立ったよね。
そんな春華さんも、僕が壊される事を後輩であった未来さんから聞いた時、とても悲しんでくれたし、僕の為に泣いてくれたりもした。
それ故に、僕だって、春華さんと離れたくないし、これから先、春華さんを見られなくもなってしまうなんて、悲し過ぎてならなかった。
春華さんが愛し合っていた人と、再びよりを取り戻せた時は、ついメッセージみたく言葉を掛けてしまったけど……
僕の正体に、気付いたのか、あの時も泣いてくれた。