幻恋【続】
僕だって、辛かった。
僕が人間だったとしたら、君の隣にいたのは、僕だったかもしれないのに。
それでも僕は、あなたがずっと幸せである事を願い続ける、そういう事にした。
「寧人、早く早く!」
ん、この声はまさか……
「春華、最近学校にばっか俺を連れて来て、何がしたいんだ?」
…やっぱり、春華さんだ。
「だって、あの男の子の声が…… 旧校舎の声が聞こえたんだもん!」
「あのなぁ…だからお前の聞き間違いだっつってんだろ?」
「本当だもん!
本当に聞こえたんだからね!!
こんな風に、ちょくちょく来たら、絶対にまた話し掛けてくれる筈だよ!」
男の方は呆れながら必死に祈る春華さんを見つめている。
勿論、彼女が発している心の声は、バッチリ聞こえている。
『お願い。
もう一度、私に喋り掛けて?』
そう彼女の心が嘆いている。
でも……… ごめん。
別に答えられない訳じゃないけど…。
そんなに喋っていたら、僕は途中で絶対に泣いてしまう。
「はぁ… 今日も駄目かぁ」
彼女は祈っていた手を力無く下ろした。