幻恋【続】
「ったくお前って奴は…良い加減諦めたらどうだよ?」
「嫌っ!
答えてくれるまで、私来るんだから!
ひとまず今日は退散するけど。
行くよ、寧人!」
「ヘイヘイ…」
「…また、来るからね」
春華さんは、僕の方を振り向き、笑顔でそう言うと、踵を返して帰って行った。
結局、そんな感じのものがかなりの期間続いていた。
…ついに、この日。
今日、僕が解体されてしまう。
結局、よく来てくれた春華さんからの祈りには答えてあげられなかった。
…こんな僕で、悪かったと思っている。
「さぁ、始めるか」
「これから、宜しくお願い致します」
僕をこれから解体する業者さんたちに、校長先生が頭を下げている。
…今思えば、この校長先生も、かつては僕の校舎を使うこの中学校の生徒だった。
そんな人が、今は立派な校長先生となっている―――。
そう考えると、ちょっと嬉しくなった。
「…よし、始めよう」
業者の人たちが次々と慌ただしく動き出し始め、ショベルカーなどをこっちへ持って来たりしている。
あぁ、ついに解体される。
もう見られなくなるこの地を、目にしっかりと焼き付けておかなくては。