幻恋【続】
ショベルカーがどんどん接近し、僕に衝突する目前で止まった。
現在の僕は、色々な物が詰め込まれていた教室は全てスッカラカンになり、ガムテープ等で沢山補強されていた窓ガラスも、全て取り外されている。
ショベルカーの腕が限界まで上に上がり、暫くすると、急に下に下げられた。
…ガツン!!
元々脆い部分のコンクリートは、元々入っていた亀裂が深く大きくなり、ガラガラと崩れ落ちていった。
僕の身体は、こんなに古く、脆くなっていたのか。
そして、僕の耳には、ガツン!と言う、大きな爆発音のような音と、ガラガラとコンクリートが崩れ落ちる音しか聞こえなくなった。
それから約三週間。
僕の身体はあっという間に崩され、残りはついに、一階にあった職員室部分だけとなった。
これを解体すれば、僕は本当に無くなってしまうし、この見慣れた景色も見られなくなる。
最後、職員室が破壊されようとした時。
本当に、一瞬の出来事だった。
あの人の――春華さんの声が聞こえた。
僕は最後の最後で、春華さんの最後の心の声を聞いた。
そのお陰で、はっきりと聞こえた。
優しい落ち着いた声。