幻恋【続】
大好きな女に呼ばれ、振り返る。
「か~えろっ!」
「…あぁ、そーだな」
二人で帰る道。
こうして学校帰りに肩を並べて帰るのは、何日ぶりだろうか。
やっぱり、懐かしく感じた。
「…なんか、懐かしいねっ」
「そーだな」
春華も、そう思っていたらしい。
「…なぁ」
俺が立ち止まって呼び止めると、春華も足を止めて振り返る。
不思議そうに首を傾げる春華の小柄な体を、俺は全身で抱き締めた。
春華がびっくりしてる。
「…や、寧人?
い、いきなりどうしたの?」
「…俺さ」
一回大きく息を吸ってから、続ける。
「春華の事、ちゃんと好きでいるから。
そりゃ、一回信用失ってるけどさ。
また、俺を信じて?」
「……」
「もう、絶対離さないから」
思っている事を、春華に存分に伝えた。
春華は、暫く黙っていたが、すぐに表情を緩めて
「…うん」
と頷いた。
…そう。
俺はもう決めたんだ。
何があっても、君の隣にいるって。
桜が舞い散る中、俺たちは優しい口づけをした。
[END]