幻恋【続】
川崎君と女の子は、二人でじゃれ合いながら、廊下を駆けて行った。
「…!」
あんな表情の川崎君、見た事ない。
明るい華が立つような笑顔。
もしかしたら…あの子は……
「彼女…なの?」
またある時の放課後。
川崎君が教室を出ると、案の定、Aちゃんが立っていた。
『あの子』って言うのは失礼だし、名前もわからないから、『Aちゃん』って名付ける事にした。
「寧人、早く帰ろぉ!」
「あ、バカ、お前引っ張んなって……」
Aちゃんが川崎君を引っ張って行く。
今だけ、川崎君にベタベタ出来るAちゃんが羨ましい。
Aちゃんしか味わえない時間や、彼女にしか見せない川崎君の素の表情も沢山見てるんだろうな。
そう思った途端、急に腹が立った。
どうして私じゃなくて、あの子なの?
彼女に強い嫉妬心を抱いてしまった私は、今すぐにでも川崎君を私の彼女にして、川崎君を失ったAちゃんの泣く顔を見て、勝ち誇ったように笑ってみたかったのだ。
…そして、ついに、ある放課後。
帰ろうとする川崎君を呼び止めた。
「あの、川崎君………あ」
うっかりしてた。