小さな恋物語
「このチョコレートは何になるの?」
七未は俺が刻んでいるチョコレートを指さして言った。
「言わねーよ。つか、今日ホワイトデーなのに浮いた話はないわけ?」
「ない。だって今日、土曜日だよ?相手もいないし。会社では昨日お返しもらったけど。…あとはシゲだね」
片想いして20年。
告白するチャンスならきっといくらでもあった。
七未が男にフラれたり、彼氏と別れたり、そういうときに愚痴を聞いたり酒に付き合ってきたのは俺だ。
好きなのに、幼なじみだから臆病になる。
俺だってそれなりに恋愛をしてきた。自分から相手を好きになって、告白したこともある。
だけど七未を想いながら付き合うなんて当然上手くいかない。
そのときは本当に相手を好きでも、最後には結局同じところに辿り着く。