小さな恋物語
「ほのちゃん、このあと予定ある?」
「バイトも休みだし、ないけど」
「じゃあ、ケーキ食べに行かない?嫌じゃなかったら、だけど」
いつもグイグイくる藤川くんが躊躇いがちに言うから。緊張が伝わってくる。
「うん、いいよ」
「ホントに?マジで?やった!!」
うわー!と大声で言って飛び跳ねている姿はやっぱりマスコットっぽい。
「あのさ、私のこと、ほのちゃんて呼ぶでしょ?どうして?」
「距離を縮めたいっていうのもあるけど。ほのちゃんの友達は、ほのかって呼んでるって言ってたから。僕だけの呼び方がいいなって」
「…私も名前で呼んでもいい?」
ウキウキ歩いていた藤川くんが立ち止まって、びっくりしている。
「名前?藤川――」
「じゃなくて。直樹くん」
「やばっ」
藤川くんは手で顔を覆ってしゃがみ込んだあとに言った。
それはズルい。めっちゃ照れる。でも嬉しい、って。
私達は初めて並んで歩きながら、ケーキが美味しいと評判のカフェへ向かった。
End