小さな恋物語


「お待たせしました」


差し出されたカップにはサンタクロースの絵が描いてある。絵の横には小さく“もか”。


「何これ」

「ん?クリスマスだから」

「もかって望花?」

「ううん、カフェモカのモカ」


お客さんのカップに自分の名前を書くわけないじゃんと笑いながら小突いてくる。何だか望花の持ち物を持たされたような気持ちになってムズムズしちゃって。


「だったらカタカナにしろよ。紛らわしい…」

「紛らわしい?」


今度は一転、怪訝そうに見てくる。


「いや、こっちのこと。そろそろ上がりでしょ?メシ食いに行かない?」

「いいけど…クリスマスだよ。うちでさえこんなに混んでるのに…牛丼屋とか嫌だからね」

「まぁ、どこも混んでたらそれもなきにしもあらず?」

「最悪だわー」


望花は大げさにため息をつきながら笑った。俺は一緒にいられたらそれでいいけど、女の子は違うよな。

とりあえず、勝負だ!
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