小さな恋物語

「でもまぁ、いっか。暖かいし。借りるね」


望花の手には大きい手袋。


「望花。手、出して」

「手？」


不思議そうに、手袋をつけた右手を出す。


「違うよ。左手」

「ん？」


伸ばされた左手をそっと握る。情けないことに俺の右手はちょっと震えていて。望花は何も言わずにその手を見つめていた。


「俺、望花が好きなんだけど」

「うん」


望花はまったく驚かずに真顔で俺の顔を見ている。だから俺の方が驚いてしまって。


「えっ？」

「何で海斗が驚くのよ」

「だって望花が真顔だから」

「私はそうなのかなって思ってたけど」

「バレてたの?!」


何でバレてたんだろ…顔にも態度にも出さないようにしてたつもりなのに。むしろノリのいい友達同士って感じだったのに。