小さな恋物語
『やばい…俺、今すげー幸せで』
『こんな、簡単にホイホイついてくる女なのに?』
『俺が連れてきたから、そんなことは関係ないんです。今ここにこうして凛さんがいることが幸せ』
このとき初めて名前を呼ばれた。そして私も名前を呼んだのだ。
『晴翔』、と。
*
「凛さん」
長島くんに呼ばれて、自分がぼんやりしていたことに気づく。
「ごめん。何?」
目の前の彼に視線を合わせたとき、一瞬で唇をふさがれた。
触れるだけのキスで、チュッとリップ音が響く。個室で誰に見られるわけでもないのに、不意打ちのキスはたまらなく恥ずかしい。