小さな恋物語



「俺は職場の凛さんと女の凛さんは知ってるけど、それ以外は何も知らない。さっさと俺の彼女になったらいいのに」


6つ下で、弟のような可愛がられる雰囲気を持つ後輩。それなのに時々こうして男だと思い知らされるから、その度に私は心をかき乱されるんだ。




私たちは店を出ると駅まで歩いた。


長島くんの家に行くことは簡単だけれど、その前に私はやらなければいけないことがある。

そろそろこの関係をはっきりさせなければ――――。



「凛さん、気をつけて帰ってくださいね。夜道は危ないから」


涼しい風と穏やかな声。


この人の声は嫌味を言おうが優しいことを言おうが、とにかくなめらかで落ちついた声なのだ。


隣にいる長島くんを見上げると、その目線は自然と私のほうを向いた。


「何?」

「晴翔くん、どうして私のこと好きなの?」
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