小さな恋物語
「俺は職場の凛さんと女の凛さんは知ってるけど、それ以外は何も知らない。さっさと俺の彼女になったらいいのに」
6つ下で、弟のような可愛がられる雰囲気を持つ後輩。それなのに時々こうして男だと思い知らされるから、その度に私は心をかき乱されるんだ。
*
私たちは店を出ると駅まで歩いた。
長島くんの家に行くことは簡単だけれど、その前に私はやらなければいけないことがある。
そろそろこの関係をはっきりさせなければ――――。
「凛さん、気をつけて帰ってくださいね。夜道は危ないから」
涼しい風と穏やかな声。
この人の声は嫌味を言おうが優しいことを言おうが、とにかくなめらかで落ちついた声なのだ。
隣にいる長島くんを見上げると、その目線は自然と私のほうを向いた。
「何?」
「晴翔くん、どうして私のこと好きなの?」