小さな恋物語



長島くんは困ったように顔をしかめる。年上の女にこんなことを聞かれてもウザいだけかと自分の発言を後悔しかけたとき、彼は立ち止まった。


「そういうところ」

「え?」

「普段は俺と距離取ってる感じだけど―――仕事もあるし。でも時々そうやって俺のこと名前で呼ぶ。甘ったるいところとそうじゃないところ。俺からするとそこが色っぽいの。俺しか知らない凛さんの一面でしょ?」


ニコッと笑うと私の腕をつかんで引き寄せ、瞼にキスをしてきた。

そして唇はそのまま私の鎖骨に押し当てられ、一瞬チクッとした痛みが走る。


「やっぱり今日帰らないで」


再び彼の力強い腕に引き寄せられて、私の体はすっぽりと彼の腕の中におさまってしまう。

ほのかに香るお酒と香水の匂い。


「どうして…帰っちゃダメなの?」


少し体を動かして長島くんを見上げると、真剣な表情で見つめ返された。私を抱きしめる力が強くなる。

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