小さな恋物語



「やっべ、腹鳴っちゃった」

「私も。あー、お腹空いた!」


顔を見合わせて笑い合う。


すると高木先輩の手が伸びてきて私の頭にポンと手を置く。見上げてみると優しい笑顔があった。


「メシ食いに行くか。どうせこれ以上残業したって終わる量じゃねーし。また明日やればいいだろ。どうする?」

「…たまにはそれもいいかも」

「じゃ、決まりな。早く準備しねーと連れて行かないからな」


明日早めに出勤して続きをやればいい。どうせまた残業だし。

何よりここで断る理由がない。こんなチャンスないんだから。


頭に置かれていた手が離れて先輩がデスクに戻ろうとしたとき、その背中を呼び止めた。


「先輩」

「ん?」


先輩が不思議そうに振り向いて目が合う。


「どうして私のこと気にかけてくれるんですか?」
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