小さな恋物語
1人になりたい時に邪魔をされるのは誰だって嫌だから、教室に戻ろうと立ち上がったときに声がした。
『別にいいよ、昼休みが終わるまでここにいても。嫌ならそう言うから、俺』
本音かどうかは分からなかったけど、先輩の顔を見る限り私に不快感がないような気がして。邪魔にならないように距離を取って腰を下ろした。
“嫌ならそう言うから”
先輩はお昼寝休みが終わるギリギリまで熟睡していて、私はその綺麗な横顔に見入ってしまった。
それから先輩は校内で私を見つけると、元気いっぱいにニコニコして「亜実!」と声をかけてくれるようになった。
時にはぴょんぴょん飛び跳ねながら、両手をぶんぶん振って。
そんな明るい性格の先輩がモテないわけもなく、私はハブられることが怖くて、あれ以来屋上には行かなかった。
先輩に声をかけられても、素っ気なく何でもないふりをして普通に挨拶を返すだけ。