小さな恋物語
「先輩は悪くないです。先輩、人気あるから…。あんまり親しくなったら私、周りからハブられるかも知れないって勝手に思って…」
「亜実、ハブられるかも知れないくらい友達出来たの?やったじゃん。マジすげー!」
先輩はまるで自分の事のように喜んで、 私の腕を引っ張って立ち上がらせてくれる。
「先輩、普通は怒るところですよ」
「それはまぁそうだけど。最初、なかなか馴染めないって言ってたじゃん。だから良かったね、友達が出来て。それと亜実が思ってるほど俺はモテない」
「嘘」
先輩後輩関係なく誰からも慕われる人で、私のクラスでも先輩に憧れる女子は多い。
「何て言うかさー、恋愛対象っていうよりは何でも気軽に言える男友達とか、マスコット的な感じなんだよね。ペットに対する可愛さ、みたいな?」
「…確かに犬顔ですけど」
「正直言うと俺は亜実が気になる。素っ気なくなってからますますね。何かあっても俺がちゃんと撃退するから。亜実、俺の隣にいてくれない?」
先輩の髪が夕日に照らされてキラキラしていた。いつになく真面目な顔で言うから、私ももう自分の気持ちに嘘はつけない。