小さな恋物語




「先輩は悪くないです。先輩、人気あるから…。あんまり親しくなったら私、周りからハブられるかも知れないって勝手に思って…」

「亜実、ハブられるかも知れないくらい友達出来たの?やったじゃん。マジすげー!」


先輩はまるで自分の事のように喜んで、 私の腕を引っ張って立ち上がらせてくれる。



「先輩、普通は怒るところですよ」

「それはまぁそうだけど。最初、なかなか馴染めないって言ってたじゃん。だから良かったね、友達が出来て。それと亜実が思ってるほど俺はモテない」

「嘘」


先輩後輩関係なく誰からも慕われる人で、私のクラスでも先輩に憧れる女子は多い。


「何て言うかさー、恋愛対象っていうよりは何でも気軽に言える男友達とか、マスコット的な感じなんだよね。ペットに対する可愛さ、みたいな?」

「…確かに犬顔ですけど」

「正直言うと俺は亜実が気になる。素っ気なくなってからますますね。何かあっても俺がちゃんと撃退するから。亜実、俺の隣にいてくれない?」


先輩の髪が夕日に照らされてキラキラしていた。いつになく真面目な顔で言うから、私ももう自分の気持ちに嘘はつけない。

< 48 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop