小さな恋物語
「ほら、コーヒー。ガムシロ2つ入ってる」
「ありがとう。雄也だけだよ、私の好みを未だに憶えてるのって」
「何度一緒にコーヒー飲んでると思ってんの?嫌でも覚えるわ」
海に着く前にコンビニで買ってくれていたというカフェラテ。渇き切った体に吸収されていく。
陽射しは強くなってきたけれど風があるからか、まだ涼しくて気持ちいい。
「あー、日焼け止め持ってくれば良かった…」
「少しくらい焼けても分かんねーよ」
「ヤだよ。シミになる。…何か、こんなに無防備で外に出たのなんて今まで無いかも知れない」
「頭ボサボサだしな。クマもある」
「こんな所に連れてこられると思わなかったもん」
今の私はスッピンで、胸まである髪の毛はボサボサで、服も完全に部屋着。白いオーバーサイズのTシャツに黒地に花柄のスカンツ、それから適当に履いてきたピンクのビーサン。
雄也も似たようなものだ。黒いTシャツとデニムのハーフパンツ、白いスニーカー。