小さな恋物語

朝、天気予報で見た降水確率は０％だった。


早朝からカンカン照りでたまらなく蒸し暑くて、会社を出た時も時折吹く生温い風と蝉の鳴き声がして、雨の匂いなんて欠片もしなかった。


それなのに地下鉄を降りて地上に出たら、まさかの土砂降り。


「全然止みそうにない…」


スマホで天気をチェックすると見事に雨雲に覆われていた。

コンビニは走っても５分はかかるし、目の前を通り過ぎるタクシーにはみんなお客さんが乗っている。

私と同じように、地下へ続く出入口で雨宿りをしている人は多かった。

通り雨なんだろうけど。疲れ果てて帰ってきてこの仕打ち…。


「あれ？のぞみさん？」


どこからともなく聞き覚えのある声がして顔を上げると、目の前にはキョトンとした顔で立っている橋本くんがいた。