小さな恋物語
「情けない…。彼氏の浮気にも気づかないなんて」
どうしようもなく情けない。自分に嫌気がさして唇を噛みしめていると、亮が私の右手を取った。
「亮?」
亮は怒っているような、何かを堪えているような表情で、私の右手の薬指から指輪を抜き取る。
小さなダイヤモンドが埋め込まれている、シンプルなプラチナリングだ。
「もういらないだろ、こんなもん」
そう言って亮は指輪を自分のスーツのポケットにしまった。
「ちょっと待っ…」
身を乗り出した亮の唇が、私の唇に押し当てられた。
一瞬だけ触れた唇が離れて、亮は体を戻して椅子に座る。