小さな恋物語
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橋本くんは私の弟の友達で高校2年生。入学して同じクラスになったのをきっかけに仲良くなったらしい。
家にも時々遊びに来ているから面識はある。
礼儀正しくて爽やかで、整った顔立ち。弟はまだどこか幼さがあるけど、橋本くんは大人っぽくて、大学生でも通じそうな雰囲気。
初めて会ったとき、『お姉さんの名前を教えてください』と言われて。それから会う度にずっと、のぞみさんと呼ばれている。
普段そんな呼ばれ方をしないから未だに慣れなくて、こそばゆいというか、そわそわするというか。
「のぞみさん」
「なぁに?」
横を向くと思ったよりも顔が近くて。
「今度、俺とデートしてくれませんか?」
「デート?」
デートって…あのデート?
私と橋本くんが一緒に出かけるってことだよね…?
「いつも言おうと思って、でも言えなくて…」